第15章 箱庭に流れる音色
3人が一斉に壱ノ型を発動させる少し前、天元は攻撃を跳ね返しながら炭治郎へ更紗から身を持ってもたらされた情報の共有をしていた。
「あいつの鎌や血鬼術に気を付けろ!毒が仕込まれてんぞ!姫さんが俺の代わりに受けちまったが……」
視界の端に映る毒を受けたはずの更紗は今も何事も無かったかのように刃を振るい、善逸と伊之助の援護をしながら鬼へと立ち向かっている。
(どうなってんだ?傷口から毒を吸い出したと言っても限界があるだろ。姫さんの力とは関係なく中和されてるってことは……やっぱ痣の影響か)
次々と兄鬼から飛ばされてくる血の刃を、音柱に相応しい派手な音を轟かせる技で相殺しながら1人逡巡しているが、炭治郎からすれば何かを考える余裕すらなくすほど、天元の言葉は胸中を不安たらしめるものだった。
「更紗が毒を受けたって……くっ……!それなら、離脱させて休ませてやらないと!」
そうは言っても今の炭治郎は絶え間なく放たれてくる鎌や血の刃を避けたりいなすだけで精一杯で、更紗の元へ駆け付けて代わりを務めてやることは叶わない。
目の前の兄鬼が妹鬼の元へ新たな剣士を向かわせるなど、許すはずもないのだ。