第15章 箱庭に流れる音色
天元は少し前から3人が自分たちの元へと近づいていることに音から勘付いていた。
それを見越して鬼の分断に踏み切ったのだ。
炭治郎が自分の前へ到着する少し前、天元は兄鬼に恨み妬みをつらつらと述べられていた。
「生まれた時から特別で選ばれた才能の持ち主」
そんな兄鬼の言葉に、天元の脳裏にはここに来てからも救えなかった多くの人たちの亡骸や、額に脂汗を滲ませていた少女の姿が浮かんだ。
生まれた時から特別であるならば、なぜ救えなかったのか。
選ばれた才能の持ち主ならば、なぜ妹のように可愛がっている少女が自分の代わりに攻撃を受け毒をくらったのか。
確かに周りからすれば恵まれたものを持っているのだろうが、それ以上に持ち合わせている者は柱の中にはゴロゴロ転がっている。
「俺ごときにそう思えるならてめぇは幸せだな。乗員乗客、剣士を全て守り切った煉獄と姫さん、煉獄が見込んで継子にしたあいつらはてめぇの羨む才能の塊だ!さっきも言ったが、なめてっと痛てぇ目みるぞ」
兄鬼がそれに疑問を呈そうと口を開きかけた時、背後から鋭い衝撃が腕に与えられた。
「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り」
その攻撃は腕を切断するまでには至らなかったが、確かに兄鬼の腕に深い傷を負わせた。
「遅かったじゃねぇか!竈門禰豆子は駄々こね終わったのかよ?」
天元の隣りに並んだ炭治郎は鬼を見据えたまま頷き返す。
「はい!子守り唄で眠りました。俺も一緒に闘わせてください!」
こちらも上弦ノ陸、兄鬼との戦闘が開始された。