第15章 箱庭に流れる音色
“どうして消滅しないのでしょうか?”
と続けようとしたが、目の前の鬼の右半身がボコボコと不自然に盛り上がり、徐々に人の形をしたものが出てくる様に言葉が飲み込まれてしまった。
この異常な光景に天元は口元に笑みを浮かべて立ち上がり、二対の特殊な形の日輪刀を構えて更紗より1歩前に出た。
「どうりで弱いと思ったぜ。姫さん、あいつらは2体で1体の鬼らしい。竈門たちが駆けつけるまで、女の鬼を姫さん1人で相手しててくれ。頸を斬っても消えねぇ異常事態、派手に頭回転させて対処法考えっからそれまで耐えろ!」
「尽力いたします!天元君もお気を付けて」
天元が目を大きく開き男の鬼へと斬りかかっていく最中、更紗は先ほど女の鬼を凝視して見えた瞳に刻まれた階級を思い出し、柄を握る手に力を加えた。
上弦ノ陸。
それが目の前にいる2体の鬼の階級だ。
以前に上弦ノ参と闘ったが、あくまで柱である杏寿郎との共闘であり、猗窩座は更紗に直接攻撃を仕掛けてこなかったからどうにかなっただけだ。
だが尽力すると言ったからには闘う以外にない。
それに未だにグズっている女の鬼には更紗も思うところがあるので、望むところだ。