第15章 箱庭に流れる音色
帯と同じ声で喚く鬼は泣いているようだが、そんなことは更紗にとってどうでもいい。
どのみち懺悔しているのではなく、頸を斬られて悔しくて泣いているだけだろうから。
顔から表情の一切を消し去り、更紗は背後から鬼の右肩へ刃を振り下ろして反対側の脇腹まで一気に薙ぎ、左半身を床へと転がした。
「恐怖や無念は感じないのに、悔しさだけはしっかり感じるんですね」
冷たい声と表情の更紗に、鬼の前でしゃがみこんでいた天元は目を細めてこちらへ来いと手招きをする。
それに反応して更紗は天元の隣りへと移動し、半身が転がった影響で床に打ち捨てられた鬼の頭を凝視した。
更紗の姿を見た鬼は罵詈雑言を喚き散らしているが、天元はそれを気にもとめず更紗の背をポンと叩いた。
「鬼が醜悪なのは今に始まったことじゃねぇ。それよりあの鬼は頸を斬っても消滅しねぇどころか、元気に喚き散らしてやがる。何かわけがあるはずだ……怒りに飲み込まれず、派手に目ぇかっ開いて状況を見極めてろ、いいな?」
鬼と対峙する天元の柱としての姿と言葉に、更紗は肺一杯に空気を吸って吐き出し気持ちを落ち着かせ大きく頷く。
「かしこまりました。それにしても……」