第15章 箱庭に流れる音色
「炭治郎さん!禰豆子さん!これは一体……」
今まで共に任務を遂行する中で禰豆子が鬼化して闘う姿を何度か更紗も目にしていたが、今までと明らかに様子が違う。
睡眠をとることで飢餓状態を回復させるはずが今は人を求めているように見える。
「禰豆子は俺が必ず抑える!更紗は宇髄さんのところへ行ってくれ!」
状況が上手く飲み込めないが、炭治郎がついているならば禰豆子は必ず元に戻ると確信し、更紗は炭治郎のそばへ歩み寄って肩に手を当て、身体中の怪我を治癒した。
「傷だけ癒しました。私は先にあちらへ向かいます」
「ありがとう……後で必ず追い掛ける!」
更紗はその言葉に頷くと、炭治郎の上で暴れる禰豆子の頬を手でそっと触れてから立ち上がった。
「頑張ってください、禰豆子さん」
小さな呟きを残して踵を返し再度入口へと進み、中にいた一般の人たちへ避難するよう促してから、天元と鬼が対峙していると思われる2階へと続く階段を登って行く。
目的の部屋で1番に目に入ったもの、それは頸を斬られても消滅していない女の鬼の姿だった。
だが目の前にいる鬼が先ほどの帯の本体だと気配で感じ取れると、驚きより怒りが込み上げ無意識に刃を振り上げていた。