第15章 箱庭に流れる音色
強制的にあの場を離されてすぐ更紗は天元に導かれ鬼がいると思われる場所へと走り出したが、わずか数秒で引き離された。
今では豆粒ほどの大きさにしか見えない天元をどうにか視界に映していたはずだったのに、瞬きをする間に姿を消した。
前方広域に視線を巡らせても姿が見当たらないところを見ると、姿を消した場所に鬼がいるのかもしれない。
そう思うと走る速度も上がる。
あの帯の本体がいると思うとおさまっていたドロドロした感情が蘇り、体が熱を帯び心拍数が意識せずとも上がって更紗の臨戦態勢が勝手に整っていった。
天元の姿が消えたところで更紗が屋根から飛び降りると、想像を超えた惨状に怒りが上塗りされていく。
「酷い……こんなにたくさんの人が」
切られた建物の断面や入口には、すでに更紗の力でもどうにもしてあげられない……亡くなってしまっている人の姿が多く目に入った。
「生きてる方の姿が見当たらない……避難がある程度完了したのでしょうか」
そうであってくれと心の中で祈りながら、物音が唯一聞こえる建物の中へと足を向けた途端、その建物の2階から人が派手な音を立てて落ちてきた。
反射的に日輪刀を抜いてそちらに体を向けると、落ちてきたのは炭治郎と身体中に葉の紋様が刻まれ額から角が突き出した、大人の女性にまで成長した姿の禰豆子だった。