第15章 箱庭に流れる音色
「行こう!これ以上被害者増やさないためにさ!こんなにたくさんの人が犠牲になったけど、あの人の嫁はこれで全員助けられたんだよ」
「助けたの俺だけどな!おら!鬼倒しに行くぞ、炭治郎が闘ってるかもしれねぇ!遅れをとるわけにはいかねぇだろ!」
伊之助は猪の頭を被っているので表情は見えないが、善逸同様笑顔を向けてくれているのが何となく伝わり、更紗の胸の中のドロドロとした感情が和らいでいった。
それに伴い更紗の顔も穏やかになり、纏っていた雰囲気もいつもの朗らかなものへと変化していく。
「ありがとうございます!天元君の奥様がたが全員無事で安心しました。あとは鬼を倒すだけですね、炭治郎さんを探しましょう!」
更紗の戻った雰囲気に天元も須磨も胸をなでおろし、同時にその頭を撫でた。
「よし!じゃあ派手に行くぞ!お前ら、遅れずに着いてこいよ!」
そう言って天元は須磨を抱え上げ、瓦礫を踏み台にして地上へとあっという間に登って行き、更紗も上がったままの身体能力を使い器用に地上へと到着した。
残された2人は顔を見合わせ、次に地上にいる3人に視線を送るが……天元から無情な言葉を投げられる。
「自力で上がって追いかけて来い。待ってやれるほど時間ねぇからな!須磨は雛鶴とまきをと合流して、藤の花の家紋の家で待機してろ。姫さん、行くぞ!」
「え、でも……」
困ったように天元と2人を見やるが、その腕を掴まれ強制的にその場を離れさせられてしまった。
……2人が更紗と合流出来るのは、しばらく経ってからとなる。