第15章 箱庭に流れる音色
「姫さん、なんかあったか?……須磨、姫さんに何があった?」
天元は再会を果たした須磨の肩を抱き寄せ、未だに言葉すら発することをしない更紗に視線を残したまま問いかけると、須磨は悲しげに目を伏せた。
「この場所に積み上げられている亡骸に心を痛めているんだと思います。あんなに怒ってる姫ちゃん、天元様からも聞いたことなかったから私も驚きました」
須磨の言葉に全員が洞穴を見回し、鬼の被害者である散らばった人骨を視界に入れると、全員同時に殺気すら感じ取れる更紗へと足を向ける。
それを感じ取った更紗は今の自分では抑えようのない怒りに全身を支配されながらも振り返り、日輪刀を鞘へしまって皆の元へ歩み寄っていった。
「お時間を取らせてしまい申し訳ございません。ここはもう大丈夫です」
ここは大丈夫に違いないが、更紗は大丈夫ではないだろう。
色の薄くなったままの目は怒りと深い悲しみに染まり、いつもの朗らかな雰囲気が微塵も感じとれない。
(いつの日か姫さんがクソ野郎に攫われた時、煉獄も同じような顔してたな……ここに煉獄がいれば、落ち着かせられんだが)
天元がそんなことを考えていると、同じ師を持つ伊之助と善逸が血の気がなくなるほど握り締められた更紗の手を取り、天元の開けた大穴の下へ引っ張って行った。