第15章 箱庭に流れる音色
それでも更紗は1歩踏み込み、日輪刀を前へ突き出して帯の目の間に刃を突き刺し地面へと固定する。
「これで動けませんね。どうですか?今まで貴女が喰らった人の気持ちが少しでも分かりましたか?痛み、苦しみ、恐怖……あちこちに乱雑に積み重ねられているあの方たちは、何の罪もないのに貴女に殺されたんです!どれほど無念だったか!」
更紗は洞穴の隅に積み上げられた数え切れないほどの人骨を指しながら帯を睨みつけ、怒りで震える手で柄を握りより深く地面へと刃をめり込ませた。
帯は痛みを感じないのか、痛みを感じていたとしてもそれより目の前で怒り狂う更紗の様子の方が可笑しくて仕方がないだけか、目を弓なりに細めて口角を上げた。
「アタシは本体じゃないからここで殺されても本体は消えないからね。恐怖や無念なんてこれっぽちも分からないし、分かるつもりもない」
元人間とは言え鬼が人間の感情など理解しない。
それは更紗も分かっていたが、殺され供養もされず物のように積み上げられている人たちの事を考えると、腸が煮えくり返る思いになった。
だからせめてこの怒りと同じ程度の怒りを感じさせてやろうと、無理やり顔に笑顔を貼り付けた。