第15章 箱庭に流れる音色
(攻撃を続ければ容易に破れます。人の意識を奪って閉じ込める物ですから、中からの衝撃には弱いのでしょうね)
きっと柱であれば、内側から脱出することは簡単だっただろう……意識さえ奪われなければ。
先ほどの帯の話しが本当ならば柱も数人喰い、それ以上に遊女や客を多く喰らい続けてきたということになる。
今まで更紗にとってただの雑音だった甲高い嘲笑が、命を奪われた人々の無念や苦痛を考えると、一気に金属を擦り合わせたような不快で耳障りなものに聞こえてきた。
更紗は日輪刀を握り直し、再び型の構えをとった。
「足元をすくってあげます。紫炎の呼吸 壱ノ型 紫炎の猫」
横に凪ぐだけの単純な技。
だが単純だからこそ一点に力を集中させる事が出来るので、帯へ亀裂を入れるのに最も適していた。
紫の炎を纏った猫が通った軌跡から徐々に帯が裂け、ジワジワと血が滲んで地面へと滴り落ちていく。
それを帯の化け物が呆然と眺めている間に更紗は、その裂け目を手でこじ開けて地へと足をつけることに成功した。
「惚けている暇はありませんよ。今から私との勝負が始まるのですから」
言葉を終えると同時に更紗は洞穴内に張り巡らされている帯へと素早く走り寄り、人を避けてそれを切り裂き救助を開始した。