第15章 箱庭に流れる音色
『はぁ?何それ。あんたが既に鬼みたいじゃない……ま、そこから出られないなら意識があろうがなかろうが関係ない。そこでアタシに勝負仕掛けたことを後悔してるといいわ。何も出来ず誰も救えず、一人一人アタシに喰われるところを指をくわえて見てなさい』
醜悪な言葉を厭な笑みを浮かべて吐き出す鬼の一部に、更紗の中が怒りで満たされるが、その感情に飲み込まれれば勝てる相手にも勝てなくなる。
それならばその怒りを糧に身体能力を上げてやればいい。
ここには天元の足手まといになりに来たのではなく、救える命を救いたいと無理を言って来させてもらったのだ。
幸いにも更紗は恐らくだが痣の副作用を克服している。
体に痣は発現しないが、例の如く瞳の色を瞬時に変化させ帯を睨みつけた。
「十二鬼月はお喋りがお好きですね。そうやって相手を見下して油断してると、足元すくわれますよ……炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」
静かで薄暗い空間に更紗の声と日輪刀を振るう音、辺りを照らすように2色の炎が帯の中で燃え上がるが、それ以上の変化は訪れず、帯の化け物の嘲笑が木霊する。
だが更紗は確かに手応えを感じたので、嘲り笑う鬼の一部になど心乱している暇はない。