第15章 箱庭に流れる音色
ところ変わって周りを岩で囲まれた広い空間。
帯が更紗を連れてきた場所は地中に作られた、大きな洞穴のような場所だ。
ここに到着するまで、幼子がどうにか通ることの出来る細い道をシュルシュルと移動してきたのだが、地面スレスレを平行移動するなど経験したことのない更紗は肝を冷やして、特に意味はないが少し仰け反っていた。
そんな事をしながら到着した洞穴の中を帯の中から見渡すと、艶やかでありながら妖しい帯が至るところから垂れ下がっており、よく見ると足抜けをしたと思われていたのかもしれない遊女たちがそこに閉じ込められている。
(こんなにもたくさん……早く外に出て助け出さないと。初めから全力で)
狭苦しい帯の中でどうにか構えをとると、ズルリと先ほどの目と口が更紗の前へ様子を伺うために体?を拗らせながら這いずり寄ってきた。
『?!あんた、なんでアタシの中で意識あんの?!柱でさえこの中では無力なのよ!』
そう言われても更紗自身よく分からない。
思い当たるといえば唇を強く噛んで、飛びそうな意識を何度も手繰り寄せた事と自身の特異体質くらいだ。
「私にもさっぱりです。ただ、お陰様で口の中が血の味で満たされています……考えられるとすればそれか、私の中の力が貴女の不思議な力を中和しているのかも?」