第15章 箱庭に流れる音色
今は遥か遠くにいる炎柱に音柱は思いを馳せる。
天元にさえこのような無茶な提案を持ち出してくるのだ、自らの師範である杏寿郎に対しては、度々無茶な提案や行動を起こしていると容易に想像出来たからだ。
(煉獄……お前の継子は俺には手に余る……にしても、合理的な案には違ぇねぇ。だが帯に取り込ませて命の保証がない現状、さすがに無茶はさせられねぇな)
自分の案が却下されるとその表情から感じ取った更紗は、天元が口を開く前に更に言葉を続けた。
「鬼殺隊でない奥様たちが命を張ったのです!それに炭治郎さんたちも危険があると理解しつつ、ここまで来てくださいました。天元君は1番危険な上弦の鬼と対峙します!私は杏寿郎君と全てを解決して帰ると約束したのです、私に人を助ける機会をお与えください!お願いします!」
今にも涙を流すのではと心配になるほど声が震え瞳が揺れているが、泣きたいのは天元の方である。
しかし今は帰れと言っているが、元を正せば自分が杏寿郎に無理を言って同行してもらった後輩たちだ。
しかも更紗だけでなく、炭治郎も伊之助も……いつも怯えている善逸でさえ帰るという選択肢はないというような表情をしている。
「わーった、分かったから泣くな!いつも慰める奴が不在なんだ……だがこれから先は俺の指示に何があっても従ってもらう。姫さんは勿論だが、特にお前らに拒否する権利はないと思え!分かったな?!」
今度は炭治郎たちの脳裏が嫌な予感に支配されたが、了承せざるを得ない今、誰も反論はしなかった。