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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第15章 箱庭に流れる音色


家人にお願いして部屋をもう1つ借り、更紗はその部屋で腰を下ろしながら先ほど見た天元と雛鶴の様子を思い出し悲しげに目を伏せていた。

雛鶴はどうにか助け出すことに成功したが、まだまきをと須磨の安否は確認出来ていない現在、2人の心境は穏やかではないだろう。

「もし鬼に囚われているなら早く助け出さないと……目の前で人が悲しみにくれる姿を見たくありません。きっと、あの女将さんを大切に思う人も今頃……」

ふと絶命していた女将の姿が更紗の頭に浮かび、胸の内が暗く重くなっていく。
あの場所にいるのが自分でなく天元であれば、あの女将を救い鬼すら倒していたのではと思うとその重みが増していく感覚に陥ってしまう。

「また……救えませんでした。弱い自分に嫌気がさしますが……せめて天元君の奥様たちを救い出すまで気をしっかり持たないと。後悔するのも悲しむのも、全て終わらせてからです!よし、家の人にお茶を貰いに行きましょう、天元君が来られた時にお出ししなくては」

暗くなった気持ちを振り払うように更紗は勢いよく立ち上がり、自身の両頬を手のひらでパチンと叩いて気持ちを切り替えてしっかりとした足取りで廊下を歩いていった。
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