第15章 箱庭に流れる音色
切見世。
病を患ったり、足抜けに関与した者などが送られる最下層の遊女屋であり、長屋のような作りをしている。
1人につき一軒与えられるが、部屋は狭く大店とは比べものにもならないほど環境は悪い。
それが佇む場所へ辿り着いた2人は天元の聴覚を頼りに雛鶴を捜索し、すぐに見つけ出すことが出来た。
しかしどういうわけか帯のようなもとの闘っている状態でだ。
更紗と天元は雛鶴の前へ飛び込み、蛇のようにうねる帯と対峙する。
「天元様、姫ちゃん、どうしてここに……」
「その話は後だ!姫さん、雛鶴連れてここを離れろ!」
柱の命令は絶対。
更紗は一瞬悩んだがその指示に従い、背後で膝を着いている雛鶴を抱き上げ入口へと向かう。
「かしこまりました!私は藤の花の家紋の家へ先に向かいます!」
「頼んだぜ!っと、これ雛鶴に飲ませてやっててくれ。解毒剤だ」
ポイと放り投げられた小さな紙の包みを受け取り、更紗はその場所から離れるために雛鶴を抱えたまま走り出した。
「姫ちゃん待って!あの帯は恐らく人を取り込みます!天元様が」
「天元君は心配ないです!すぐに合流して下さるはず……でも人を取り込むならば、形さえ残っていれば使い道がありそうですね」
ニコリと笑顔を向けてくる更紗に雛鶴は嫌な予感を感じながら、手渡された解毒剤を口に含んで自分より小さな少女に体を委ねた。