第15章 箱庭に流れる音色
更紗は立ち上がって尻についた土を払い、地面に転がる日輪刀を鞘にしまって準備を完了させる。
「……俺も人のこと言えねぇけど、姫さんいつの間に着替えた?分かれて聞き込みする時は隊服じゃなかっただろ?……煉獄に見つかったら怒られる方法じゃねぇよな?」
天元の言う通り、聞き込みの際に隊服ではあまりに目立ち、鬼に見つかって警戒される恐れがあったため互いに普段着で行動していた。
だが今は2人とも隊服に身を包み、日輪刀もいつもの場所に装着されている。
天元は着替えようと思えば物陰に隠れれば問題なく着替えられるが、冷や汗を流し向こうを向いてしまった更紗はそうもいかなかったはずだが……
「それは……でも着替えているところを誰にも見られていないので、杏寿郎君との約束はやぶっていません!そ、それより雛鶴さんを探しに行きましょう!」
「どんな約束してんだよ!ハハッ、まっいいわ!んじゃ雛鶴の居そうな場所虱潰しに当たってくから、はぐれんじゃねぇぞ!鬼舞辻はもう出てこねぇと思うが、用心するに越したことはないからな!」
そう言って天元も立ち上がると、体をほぐすように両腕を後ろへ伸ばして準備を整え終える。
「はい!全力で着いてまいります」
「ぉし!んじゃ行くぞ!」
こうして2人は静けさを取り戻しつつある花街の夜闇に紛れ、雛鶴奪還のために動き出した。