第15章 箱庭に流れる音色

治癒を開始する更紗はその時間すら惜しいのか、天元へ今の出来事を伝える。

「たった今、鬼舞辻無惨が姿を現しました。連れて行かれそうになりましたが、天元君が来てくださったので事なきを得ました……しかし、私では身体能力を上げても手も足も出ませんでした……申し訳ございません」

痛みが引いていっているはずなのにその表情は歪んだままで、まるで痛みが更紗を蝕み続けているように見えた。
そんな更紗に天元の表情も歪むが、それをすぐにおさめて黒く短くなった髪をくしゃりと撫でる。

「謝ることじゃねぇだろ。鬼舞辻が姿を現したことには派手に驚いたが、姫さんが攫われねぇでよかった。鬼殺隊としてもだが、個人的にもそう思ってる。それに、雛鶴の居場所を突き止めてくれたじゃねぇか！生きてるもんが勝ちだ、そんな落ち込むな！」

天元の言葉に痛みに歪んでいた表情が少しずつ解れていき、ちょうど治癒も完了したのか両手を開けたり閉じたりして動きを確認していた。

「ありがとうございます。鬼舞辻無惨のことは後で考えます！……治癒も無事に終わりましたので、私も雛鶴さんの元へ連れて行ってください！必ずお力になってみせます！」