第15章 箱庭に流れる音色
日輪刀の刃が更紗の腕に到達する寸前、突如強い力で体を後ろへ押されその刃先は僅かに自らの前腕を傷付けるに終わった。
チリとした痛みに目を閉じてしまった一瞬後、再び視線を戻した時には既に鬼舞辻の姿はそこにはなく、ただ折られた腕の痛みだけが夢でなかったと証明する。
そこへ神久夜の伝言を聞いた天元が姿を現し、涙を流し地面へ座り込み呆然としている更紗を見て、その惨状に目を見開いた。
「姫さん!何があった?!両腕折れてんじゃねぇか!くそ……一度藤の花の家紋の家に」
「待ってください!こんな傷はすぐに治せます!それより雛鶴さんを助けに行かなくては……すぐそこの人集りで聞いたんです、雛鶴さんは姿を消したとか病にかかったとか……と。心当たりはありませんか?病にかかった女性が行く場所に」
更紗の体を抱え上げようとした天元の腕を掴む手は、折れて激痛が走っているはずなのにしっかりと力が入っている。
それと同じように色の薄くなった瞳も、ここで引くつもりはないと力強い光を放っていた。
「あるにはあるが、姫さんをこのまま放っておけねぇだろ!」
「分かりました、数秒待ってください。すぐに治します」