第15章 箱庭に流れる音色
自分を恐れ身体を震わせながらも笑顔で対峙し、減らず口を叩く更紗に鬼舞辻は不愉快だと言わんばかりに眉間に皺を寄せながらも、言葉通り逃がす気はないようで1歩ずつ歩み寄っていく。
それに合わせて更紗も1歩ずつ後退するが、もう既に後がない。
ここから僅かでも動けば人が多く集まっている通りに出てしまうからだ。
鬼舞辻を1人で倒すなど出来るはずもないのに、多くの人を守りながら闘う力量なんてあるはずもないのだ。
今は神久夜に預けた伝言を聞いた天元が来てくれるまで、時間を稼ぐしか残された道はない。
「偉く静かに事を進めようとしているのですね。人に騒がれて柱に来られると怖いからですか?そうですよね、死ぬのは怖いですもんね。しかも、ここで貴方が私たちの手にって倒れれば鬼が全て消滅……してしまう……」
そう言いかけた更紗の脳裏に鬼の少女の姿が浮かんだ。
(禰豆子さんも……消滅してしまうの?)
そんな考えを知ってか知らずか、鬼舞辻は表情を変えぬまま徐々に距離を詰めてくる。
「貴様はもう何も話すな。貴様の血肉は私の研究の糧となるのだから、殺すわけにいかないのに殺してしまいそうになる!」