第15章 箱庭に流れる音色
更紗はすぐさまその場から離れようと静かに後退りするが、突如猗窩座と会敵した時より、もっとおぞましい何かにより全身に悪寒が走った。
「上弦ノ参よりも……上の鬼が近くにいる。でも何処かが分かりません」
残念ながら更紗には天元や他の継子たちのように、特出した探知機能は持ち合わせていない。
また柱たちのように鋭い感覚で鬼の位置を把握することも出来ない。
悔しさに奥歯を噛み締めるが、それを深呼吸して鎮める。
「……考えても仕方ありません」
更紗は横路地へと素早く身を潜ませ、上空を飛んでいる神久夜へ手を振って呼び寄せて腕に止まらせ要件を伝えようとした瞬間、目の前の何もない空間に障子が出現した。
「嘘でしょ……神久夜さん!天元君をここへ呼んで下さい、急ぎで!」
障子が開き切る前に神久夜を空へ放ち、その手を日輪刀の柄へとそのまま滑らせて抜刀し、瞬時に体温と心拍数を上昇させて臨戦態勢を整える。
「貴様、あの役立たずの男が言っていた女だな?一緒に来てもらう、拒否権はない」
中から姿を現したのは、以前に当主の背後にいた黒い着物を纏った鬼と同じ目をした青年だった。
「鬼舞辻無惨……ですね?残念ながら拒否します!」