第15章 箱庭に流れる音色
静かだった辺り一体が騒然となる。
落ちたものがナニか、更紗は見なくても分かってしまった。
任務先で何度か聞いたことがあったからだ。
それはどれもこれも目を覆いたくなるほどの惨状だった。
きっと音のした方へ行くとそれを目の当たりにしてしまう。
だがあの音は尋常じゃない衝撃から出たものだ……鬼に繋がることは間違いないだろう。
「確認しないと……」
天元の嫁たちを救い出すため、杏寿郎との約束を果たすために踵を返し、音のした方へ駆け出して人集りが出来た場所を覗き込むと、想像していた通りの事態となっていた。
女将か遣り手と思しき女性が、体から血を流して地面へと横たわっている。
衝撃によりあらぬ方向に曲がってしまった手足、形の変わってしまった頭部……絶命しているのは明らかだ。
『あれ、京極屋の女将じゃないか?』
誰かが放った言葉に更紗の心臓は早鐘を打つ。
『京極屋は最近どうなってるんだ?確か花魁が1人姿を消したか病にかかったとか噂もあったろ?』
昼間には誰も教えてくれなかった情報が流れてきた。
この非現実的な惨状を前に心にしまっていたものを思わず吐露したのかもしれない。
「天元君……天元君に伝えないと!」