第85章 無色透明
優鈴はキッと前を向いた。
「この戦場、俺に仕切らせてもらおうか!!」
その目はメラメラと燃えていて、到底口出しできる雰囲気ではなかった。
そこからの優鈴はもうすごかった。
「!油はそんなに入れなくていい!!揚げ物やるんじゃないんだぞ!!」
「…わ、わかった」
「安城サン、そのみみっちい火力舐めてんの!?もっと派手に燃やしてください!!料理は火加減命命命イノチイノチイノチきえええええええェェェェェェーーー!!!!」
「ちょっと、この子どうしちゃったの?」
「……あるじゃないですか、ハンドル持ったら人が変わるタイプみたいな。昔は刀を持てばこうなったものです。」
「……恐ろしいわ…!!同じ時期に柱じゃなくてよかった!」
鬼神と化した優鈴のおかげでカレーは美味しそうに出来上がった。私と先輩のせいで野菜の形が歪だと言われたが、まぁ優鈴の納得するカレーになったらしい。
台所もすっかり綺麗に片付いたし、お米も炊けたし何よりだ。
「……おい、一体何の騒ぎだ………」
その時、実弥が台所に姿を見せた。
恐らく彼はぐったりしている私と、やたらと闘志をギラギラと燃やしている優鈴が見えただろう。
「は?え?は??」
「…この戦争、俺の勝ちだ……」
「……は?????」
優鈴は椅子に座り、燃え尽きたようにふっと微笑んだ。
実弥は意味がわからないことに首は突っ込みたくなかったのか無視して私に話しかけてきた。
「おかえり。どこまで行ってきたんだ?」
「海」
「そうか。ありがとな、2人とも。」
「「…うん」」
2人は疲れ切った顔で頷いた。
「さて…帰りますかね。」
「帰りは私が運転しましょうか…?」
「………遠慮しとく。」
優鈴は震える手で鍵を握り締めていた。
「なんだ?疲れてんのか?休んでいかなくていいのか?」
「あまり踏み込まない方がいいよ」
私が言うと、実弥は黙った。
……説明するのも理解してもらうのもだいぶ面倒くさそうだし。