第85章 無色透明
まず最初。
美味しいカレーを作ろうということで。
天晴先輩がナスを真っ二つにへし折った。
その隣で私が人参をバキッと折る。
「懐かしいわね…前世で私の屋敷にきたばかりの頃はよくこうして一緒に料理したっけ。」
「そうですね。あなたは何でもできたけど私は全然できませんでした。」
「ふふ、あの時と変わらずあなたはかわいいままよ。」
そう言って先輩は玉ねぎを握りつぶした。そしてダン!と派手な音を立ててジャガイモを木っ端微塵に叩き切った。
「ちょっと待て!!!!一旦ストップ!!!!!」
「あら?そんな大声出すと実弥くんたち起きちゃうわよ?」
「俺が何もしなくても轟音で起きらぁ!!!それよりなんだそのバイオレンスクッキングは!!!!!」
優鈴は急にギャアギャアとやかましくなった。
「バイ…オ…レンス?ごめんなさい、私横文字に弱くって。」
「目の前の惨劇がバイオレンスだクソッタレ!!!!!」
私と先輩は揃って首を傾げた。
「なんで野菜をへし折って握り潰すんですか!包丁使ってくださいよ!!」
「使ったじゃない。」
「野菜を粉々にしといてよく言えたもんだ!!!」
またまた私たちは首を傾げる。
「でも、野菜は細かくした方がいいって…」
「〜!!お前、カレー食ったことあるよな!?家で出てきたことあるよな!?」
「……お母さんの手料理なんて覚えてない…」
「ごめん!!!!!」
ギャン!と謎の悲鳴をあげて優鈴が撃沈した。
「いやでも、安城サンは…!!」
「私?私も親の料理なんて知らないわ。姉さんたちが作ってくれてたけどウチはこんな感じよ。」
「……す、すみませんでした…」
「?別にいいけど。」
優鈴は台所で撃沈。
…?一体何がダメだったんだろう。
「の料理できないルーツがまさかここにあったとは…」
そしてブツブツと何かを言い出したかと思えば、急に立ち上がって上着を脱いだ。