第85章 無色透明
その後、優鈴は天晴先輩にジャンケンの極意を教わっていたが多分あいつに習得は無理だろう。
反射なんてもの鍛えるもんじゃない気がする…。圧倒的その人のセンスじゃない?先輩はそれが秀でているだけで。
戦い方を私に教えたのがあの人だったから、私も先輩と同じようにできるだけ。でもやっぱり、速さじゃ敵わないよねぇ。
「…あら、霧雨ちゃん!ごめんなさい、私ったらつい夢中になっちゃって。」
すると、夕陽が沈み出した頃に先輩がハッとして私に言った。
「大丈夫です。2人を見てると飽きません。」
ジャンケンひとつでそこまで夢中になれるのシンプルにすごいと思う。
「なんとなく感覚掴んだから今度やってみるよ。次は勝ってやる。」
「それフラグ?」
「勝利宣言!!!!!」
世間ではきっとそれをフラグと言うのだ。
「お前も馬鹿にしたようなオーラ出してんじゃねぇよ!」
「馬鹿にしたようなオーラとは」
「ウルセェ!!ほら、帰るよ!!」
「え、突然切り替わるじゃん。待って引っ張らないでぇあぅ〜………」
「歩け!!!!!!」
最後はなぜか怒った優鈴にズルズルと引きずられ、車まで強制送還された。
砂浜に長居したせいで三人揃ってドロドロになったため、しばらく砂を落とすのに時間がかかった。
私がいつまで経ってもぼうっとしてるから優鈴が怒鳴った。
「出発できねぇだろお前は一ミリくらいやる気を見せんかい!!!」
超高速で私についた砂をはらいながらそう言った。結局やってくれるんだ。
「まぁまぁ、怒鳴ったってしょうがないでしょ。そうじゃなくても子供生まれたばっかりで大変でしょうに。」
「…大変ではないですけど。」
「いいんじゃない?」
先輩はにこりと笑った。
「霧雨ちゃんがボケッとしてる顔見るとホッとするわ。」
「でも家に赤ちゃんいるし実弥ばっかり動いてるし……」
「お前が選んだことなんだからそこは責任問題だろイッテ」
優鈴はニッコニコの先輩に鳩尾つかれて駐車場を転がり回った。
……今の物凄く綺麗に入ったなぁ。