第82章 千年の子守歌
痛いと言えば痛いし、痛くないと言えば痛くない。
いや痛いか?
泣き叫んだような、黙り込んでいたような。
ただ一つ言えることは、出産って大変だなあってことくらい。
意識がほとんどない。陣痛が長かったのもあるけど。……感覚が麻痺してきた。
_______________________カラカラカラ
ああ
_____________________________カラン
ほら、幻聴まで聞こえてきた__________
風が強い。
でもうっとうしくなくて、ほどよく心地よい。
___________風車がよく回る。
気づけば私はだだっ広い草原で一人、風車を持って立ち尽くしていた。
「ついにお迎えが来たの…?」
なぜか持っている風車を手に一人でつぶやく。
…変なの。死ぬときってもうちょっとドラマチックじゃないのだろうか。
いや、まぁ人の死にドラマを求めること自体が間違いだと思うけど。
「痛いのかよくわからないまま死んでしまった…。」
出産ってもっと感動的なのでは?あんなにふわふわした意識の中死んでいくとか…。
無事に生まれたのだろうか。
今は祈ることしかできないけれど。
おかしいなぁ。愛おしいと思うときもあったのに、今は情がわかない。
……未練という未練が消えたのだろうか。何の感情もわいてこない。
「まぁ、マシな死に方だったでしょ。」
私は嗜虐的に笑い、風車を地面に刺した。なにかを持っているのがいやだったので、私は手ぶらで歩き始めた。