第78章 昔からの憧れ
「…家出?」
「げんがじだの!!!」
ボロボロに泣く私にアマモリくんが驚いていた。
「え、ほんで新しいアパート契約って…え??そんなに???」
「もうあんなやづどぐらじでいげない!!」
「落ち着いてぇな」
ここはアマモリくんが働く不動産屋さん。
ええと、結論から言うと私は口喧嘩で惨敗した。
あのあと実弥は悪魔みたいに怒ってもう話し合いにならなかった。
『じゃあ俺は自分の知らないところでいつの間にか大怪我してたお前を永遠に見続けないといけないのか』『なんで話したくないのかすらわからない』という、大体こんな話だったと思うけど。
「そんな、まだ一年も経ってないのに別居ってやめた方がいいと思うけどなぁ。そう言う人おるにはおるんやけど。」
「…もういい。役所行く。」
「落ち着きって。不死川は知ってるん?」
「言ったよ。もう無理だからこの家出て他のとこ行くって。」
「えっ不死川それ認めたん?」
「できるもんならやってみろって。だからやってやるの。」
私はあの時の実弥の顔を思い出してギュッと唇を噛み締めた。
……あのやろう、私がいつまでも大人しい女の子だと思ったら大間違いだ。
「で、結局どっちが悪いん。」
「知らない。」
隠し事してた私が悪いのかもしれないけど、霧雨のことだけは知られたくなかったんだ。
なんとなく、分かろうともしてくれないところがショックで。
「…まあ、別にええけど。ペットも住めるところな。」
「にゃん」
私の隣にはケースに入れられたおはぎがいた。
おはぎが前回のようについていくと言ってきかなかったのだ。
「……ここら辺競争率高いからなぁ。」
アマモリくんは文句を言いつつもちゃんと探してくれた。
私はその話を聞きながら、実弥との話し合いのことを再び思い出していた。