第77章 世界一の辛さ
私はもう話せない女の子じゃない。
話せるのなら話してしまえ。
「……前にさ、あなた、私に偽善者ぶってるって言ったでしょ」
「言ったか?」
「言った」
私はトン、と左の頬を指差した。実弥が苦い顔をする。そう、彼が私をぶっ叩いたときだ。
「痛かったなぁ…」
「うっ…!」
実弥が目を逸らす。私はその様子にクスクスと笑った。
「事後報告になって申し訳ないけど、ひとまず兄のことは解決したよ。」
「……」
「私ねぇ、実弥にはすごくいろんなこと話してると思う。ううん、そう思い込んでた。こんなに自分の気持ちとか話したことなかったから。でも、なんでそんなに全部話さなきゃいけないんだってたまに嫌だったりした。」
はっきり話すって案外私には難しい。今までやってこなかったんだなぁ、と痛感させられる。
「私は、偽善者ぶって隠し事をしていたんじゃなくて…言いたくないから……実弥に知ってほしくなかったから、全部内緒にしてたんだよ。でも…実弥には言わないといけないかなって、思ってたけどもう正直限界。」
私はぐっと拳を握った。
「…ねぇ、最低な聞き方だと思うけど、一つ聞かせて。私、そんなことまで君に話さないといけない?全部話さなかったら、そしたら私はひどい奴になる?」
実弥を責めているような言い方なのはわかってる。
言葉選びが下手なのもわかってる。
ああ、これで終わってもいいかとそんな気でいた。
この関係を始めたのも私で、終わらせようとしたのも私。
この関係を唯一続けようとしたのは実弥だけだった。私は何度も終わりにしようとしていた。
疲れた。
苦しい。
どうしてこう思うのだろうか。
こうなったのは全部私が悪いのだろうか。
もう、考えるのも飽き飽きだ。