第75章 怒ってます
実弥はぷんぷん怒っていたけれど私はゲラゲラ笑い転げた。まあ、今は笑い声も出ないんだけど。
「ぜえ、ぜえ…くそっ、お前が言い返してこないと張り合いがねぇ…!!」
【笑笑】
「やめろムカつく」
私のスマホを取り上げてぽいっと投げ捨てる実弥。スマホはソファーの上にポスっと柔らかい音を立てて落ちた。
「飯食うか」
彼の提案に、私は子くんと頷いた。
ご飯作る時もいつもはギャアギャア言いながらやるのに、今日は静かだった。
あれ?もしかしていつも騒がしくしてるのは私だけ?
私が話さなかったら実弥って静かなのだろうか。いや、でも中学校の時からいつもはしゃいでる感じだったっていうか…。
その日はそれ以上喧嘩するということもなく、淡々と一日のルーティンを過ごして行った。
次の日。
実弥が仕事に出かけた直後、私はタクシーを捕まえて颯爽と外に出かけた。無断外出は実弥に怒られちゃうけど、無断でないとオーケーが出なさそうなので。
どこに行ったかっていうと、春風さんの家。
「わあ!さんようこそ〜!!」
『童男と那由多について教えてください!!!』
「言うと思った」
春風さんは口を動かすだけで言いたいことが伝わるので助かった。
「すみません、私も守秘義務というものがあるので。」
『じゃあ私が言い当てます。』
「そんなに詰め寄らないで……まあ、妊婦さんを追い返すわけにもいきませんから中に入ってください。」
春風さんは押し…というか、自分を頼ってくる人に弱い。そしてその優しさから私を追い返すことはないだろうと予想した。
ふふふ、計画通り。
いつもエスパーみたいに不気味なところがある春風さんだけど、意外と逆手に取りやすい。