第72章 “本当の記憶”
『さて、今後の鍵は見つかったかな?』
陽明くんは急にふざけたような…いつものテンションに戻った。しかし、彼の姿は神々しい着物姿のままだった。
『ずいぶん長く話してしまったが…もうここまでか。うむ。時を超えるのも楽じゃない。』
『???』
『娘よ、そなたの生きる時代は令和、というのか?』
『え、何そのギャグ。』
急に何キャラになったんだか。
それでも、私は頷いた。
『そこに鬼はいるのか?』
『いないよ』
『皆は笑っているか?』
『まあ、泣いたり怒ったりもするよね。』
陽明くんは笑う。
『良い時代だな』
そう言った彼の体がハラハラと藤の花のように散っていった。
『ああ、そうだ。』
『何?ていうか、陽明くん消えちゃうの?…もっとお話ししたいんだけどなぁ。』
『ははっ、無茶を言う。もう限界だよ。』
彼の体はもう半分ほど消えてしまっていた。
『“そちらの私”には私のことを言うなよ。』
『え?』
『私があなたに干渉したことを“そちらの私”に知られれば、神殿の前で小言を言われそうなのでな。』
陽明くんはそんなことを言って消えてしまった。…いったいどういうことだろう?
『…起きるか』
考えるのに疲れ果てて思わずそうこぼしていた。
いいかげん夢の中も飽きてきた。
そうぽろっとこぼした言葉に、どうやら私の無意識領域とかいうやつは反応してくれたらしい。
私はすぐに夢から引っ張り出された。
つまり、目を覚ましたのだ。