第71章 何したらいいの?
「話は聞きましたよ」
天晴先輩と桜くんの背後から、ぬるっと手が伸びる。
そして2人の首にするりと巻きついた。あまりのホラーな映像にヒッと悲鳴が出てしまった。
背後から現れた春風さんは顔が真っ赤…うわ、お酒まだ抜けてない!!ていうか二口くらいしか飲んでなかったよね!?めっちゃちびちび飲んでたし!!どうしてそんなに酔ってるわけ!?
「なぁるほどぉ〜2人の兄ですかぁ……霧雨、那由多…童男…」
「ちょ、氷雨サンしまってる首しまってる完全に決まってるこれ」
「ギブよギブ、ギブアップよお願い離して」
2人が顔を真っ青にしていた。
春風さんがパッと手を離すと、ゲホゲホとむせた。
「そ、ゲホ、そういえば、ゴホゴホッ、……買収で有名になってんの、DRIZZLEって会社だってね…」
「…オエッ、それがどう…ウッ、どうしたの」
「2人ともお茶飲んだほうが…」
コップにお茶を注ぐと、2人はそれを一気に飲み干した。
「DRIZZLE……日本語に訳すと“霧雨”。」
「えっ!?」
「……そうなんですよ。」
私はあはは、と頬をかいた。
2人がパニックになる背後で春風さんはうんうんと頷く。
「つまり、あなたの兄は情緒不安定をこじらせたクソ野郎ってことですね。」
「…そうなるんでしょうか。っていうか、まだ出会って間もないので私も相手のことはわかりません。」
「……しかし、この買収が進むとまずいことに変わりありません。産屋敷家の力と霞守家の力が消えてしまうのですから。」
「えーと…」
私が首を傾げると、桜くんが大袈裟にため息をついた。
「木谷さんの鎮魂とかファンタジーな話を差し置いても結構まずいんだよ。あの二つの家があるから悪者が大人しくしてるところもあるし。」
「え、そうなの?」
「あの無惨でさえすぐに手を出さなかったんだ。それだけ強力なんだよ。」
なるほどなるほど。
「…その童男とかいうやつの言う通り、買収後に何が起こるかわからないよ。まじで。」
そう言われるとどんどん真実味がわいてきた。
…そうなればなるほど嫌な予感がしてしまって……。