第71章 何したらいいの?
その日、実弥は…なんと夜の10時に帰ってきた。
疲れ切った彼を見ると何も話が聞けなくて。実弥の話を聞きたかったけど、やっぱり学校での話は私にできないみたい。
そんな日が数週間続いた。
その間も、買収の話はどんどん続いていった。
母から兄のことを聞こうとしたが…。もう縁切りの手続きは終わってしまっているから、それも叶わなかった。
母と接触しようとした際に氷雨家…つまりは、春風さんを通したものだからこれがまた厄介なことになった。
「だから、何があったのかと聞いているのです!!」
「いいえ何でもございません!!」
「嘘おっしゃい!!さっさと言ってくださいな!!」
「言えたら苦労してませんよ!!」
「……あんたたち、いつまでそれやってんの…?」
今日は私、春風さん、天晴先輩、そして桜くんで少し遠出をしている。
一泊のプチ旅行みたいなもので、基本的には宿でゆっくりするということがお目当てだ。
春風さんが声をかけて…すぐに集まるあたり私たちらしい。旅行には実弥が大反対だったけれど、春風さんがなんか上手いこと乗せて許可をもぎ取った。
その証拠に数分に一回は彼から連絡が入る。
春風さんに『実弥が多忙で今家で1人なんですよ!』とかなんとか母親の要件を相談するついでにこぼしてしまったのがことの発端だが。
まあ、リラックスできていいんだけど。
お風呂も入って、部屋まで料理を運んでもらってさあ晩ご飯だというときに超絶面倒なことになった。
春風さん、実は超絶お酒が弱い。そのくせに、せっかくだからと日本酒をちびちび…すっかり出来上がってしまったのだ。
そのせいでさっきからずっとこんな調子。嫌な言い合いが続いてしまっている。
桜くんと天晴先輩はダル絡みをする春風さんに呆れ返って、仲裁に入ってくれた。
「妊婦さんもいるんだからお酒なんて飲むなって言ったのに、このバカ。」
「うう〜だからぁ、何があったか素直に吐くのです、ヒック」
「こんなにデロデロになって…あんた、食べたもの吐かないでね。」
「……」
天晴先輩はズルズルと春風さんを引きずり、部屋の布団の上に転がした。あまりの雑な扱いに少し不安になったが、すぐに寝息が聞こえたのでほっとした。