第67章 兄たちと妹
次の日、朝起きると春風さんがリビングで実弥と朝食の用意をしていた。私はというとすっかり寝坊だ。
「おはようございますー」
「ぎゃああ寝起きからイケメンが完成してるぅぅ」
は?この人なんで朝からこんなにイケメンなの?何なの?キラキラしてるんですけど!!
「ええ〜?イケメンって私ですかぁ〜?」
「まぶちい」
「ほらほらまぶちいイケメンですよお〜」
「ウキャキャッ」
朝からだる絡みをする私にもまさかの神対応。はしゃぐ私たちに実弥はうんざりしていた。
実弥を壁にして二人で追いかけっこをしていた。朝からドタドタうるさい私たちに実弥はいやそうな顔をしていた。
おはぎは我関せずという感じで水を飲んでいた。
「わあ、朝ごはんも作ってくれたんですか。」
「はい。実弥くんはエッグベネディクトで、あなたは火が通ったものいいかと思ってゆで卵のサラダとパンです。」
「エッグ…パ…ラ、サイト…?え!え!私もそっちがいい!!」
「俺のだからだめだァ」
「あっその顔!美味しいって顔だ!!」
「めっちゃうまい。」
ドヤ顔で言われてちょっとムカついた。
う、いつか食べてやるんだからエッグパ…ン……なんとか。
「春風さん今日は出勤ですか?」
「いいえ、家に戻って仕事です。午前にリモートで会議があるので。」
朝食の時間も黙々と過ぎていき、片付けを終えると実弥の出勤時間に。春風さんはそれと同じタイミングで家を出ることになった。
「すみません、長々とお邪魔しました。とても楽しかったですよ。」
「いやあ、ご飯とか片付けとか…色々こちらもありがとうございました!いってらっしゃい。」
私が手を振ると、春風さんはちょっと驚いたみたいだ。そして心底嬉しそうに笑った。
「行ってきます。」
一人でいるとこんな挨拶もないのだろう。
春風さんはこれくらいのことで喜ぶような、慎ましやかな人だ。
もうずっとお世話になっている…大事な私の家族だ。
(…この人の方が、“兄”って感じ。)
そんなことを思いながら、ふっと微笑んだ。
「じゃ、行ってくる。」
「おう。」
「俺のこともかわいく送り出せよ!!」
実弥がギャアギャアなんか言ってたけど無視してドア閉めといた。
へへっ。なんか知らんが春風さんがいる間ずっとぷりぷり怒ってたから仕返しだ。