第67章 兄たちと妹
春風さんは着替えを持っていなかったので、実弥が服を貸していた。春風さんは実弥ほど大きくはないが、彼が着ても問題ないだろう。
春風さんが一番風呂で、あとは私が入って最後に実弥。実弥がお風呂に入ると必然的に私たちは二人になった。
並んでソファに座り、テレビを見ていた。
「…お茶のおまけについてきたいーくんのグッズ、忘れていました。はい。」
「あ、ありがとうございます。」
その時突然渡されたものを見て思い出した。ああ、そうだ。電話でそんな話したっけ。
「実弥くんに見つからないようにね。」
「……はい。」
…?
なんだろう、どこか変だな。
「……春風さん、大丈夫ですか?」
「え?」
私はハッとして慌てて口を閉じた。しまった。つい直球に聞いてしまった。
「あ、えーとえーと。……最近、家族の人に会えてないんですよね?…大丈夫かなって。」
「……ああ、すみません。そうですか、やはり感情に出ていましたか。」
彼はしゅん、と肩を落とした。
「この歳になって何をと思われるかもしれませんが、……一人で家にいると億劫なんです。」
「そんなことないですよ。誰でも寂しくなる時ってあります。」
「…ありがとうございます。なんだか、あなたたちを見ているとより一層寂しいように感じてしまって。」
……相当参ってるんだな。感情からひしひしとそれが伝わってくる。
「その…あまり言わないで欲しいんですけど」
「は、はい」
「実は、結婚しようかと思いまして。」
「え!?」
思わず大きな声が出て慌てて口を塞いだ。
「…一人で家にいるのが寂しいのだから、手っ取り早く一緒に暮らす人を探そうと……私も、歳も歳ですし。そろそろ…と。」
「そ、そうなんですか。お付き合いしている女性がいるんですか…?」
「いえ…あの、まあ、俗に言う“婚活”です。誰にも言っていなくて…今初めて他の人に言いました。」
少し恥ずかしそうな春風さんははにかんだ。