第67章 兄たちと妹
春風さんとの話に盛り上がっているうちに二人して時間を忘れていた。
そんな時に限って実弥の帰りが早く、帰ってきた彼はギョッとしていた。
「こんばんは」
「あっ、すみません…お邪魔しています。」
春風さんが慌てて立ち上がる。
…突然の訪問だったから実弥に連絡してなかった!ああ、これは怒られそうな……。
「じゃあ私そろそろ帰ります。…すっかり長居してしまいまして……。」
「えっ、えー!!そんなこと言わずに、晩ご飯食べていきません??てか泊まっていきません!?」
春風さんが帰ったら怒られる…と思った私は、咄嗟にそんなことを言ってしまった。
実弥は嫌そうな顔を一瞬だけ見せた。春風さんは、ニヤリと笑う。
「い・い・の・で・す・か?」
「もち」
ここまできたら引き返せない。
私は親指を立てて彼を歓迎した。
「ひとまず…晩ご飯用意します。私はクッキーでお腹いっぱいだから…。」
「いえいえ、台所をお借りできるのなら私が作ります。お邪魔しているのですから。」
「えっそんな…」
春風さんはテキパキと動いた。私が勝手に言い出したことに対して案外乗り気だったようで、嬉しそうだった。
…実弥は怒ってるけど。
おはぎがふらふらと私たちの間を行き来して、ただならぬ雰囲気をおかしく思っているようだった。
「はい、蒸し鶏を乗せたトマトリゾット、野菜のスープです。なるべくあっさりめにしました。あっ、ピクルスも漬けたんです。長時間漬け込まなくても美味しくなるコツがあるんですよ。
他にもいろいろ作りすぎちゃったので、保存容器をお借りして冷凍庫に入れておきました。解凍して食べてくださいね。」
「わあ」
「…すげぇ」
「お口に合えばいいんですけど。」
目の前にはずらりと綺麗な料理が。美味しそうだし、盛り付けも美しい…春風さんがシェフに見えてきた。
しかも調理しながら片付けていたのか、台所は綺麗だったし…なんなら、いつも以上に片付いていた。