第64章 恨みは吐き出すもの
年末の大掃除も終わり、正月までの束の間の休息。毎年張り切って実弥がやってくれるんだけど、今年は私もせかせかとはたらいた。
今日は31日。大晦日。
いやあ〜どでかいテディベア買ってよかったな。もふもふに埋もれてお昼寝ができるなんて幸せ…。
「ふんっ」
「あ、おいこら」
しかし、もふもふに埋もれていると決まって実弥が横から邪魔をしてくる。
そしてクマを遠ざけてぐいっと私を引き寄せてくるのだ。
「……実弥」
「……」
「なんか言いなさいよ」
ふわふわの人形から何がよくてガチガチ筋肉の男に埋もれないといけないのだろうか。
「クマ嫌いィ」
「OH……」
こういう時は決まって機嫌が悪い。
でも私は眠いので頑張って眠ろうとするけれど、実弥がそばにいるとやはりそれができない。
「寝たいからちょっと一人にして……」
「……」
「ねえ…」
カクン、と頭が落ちる。けれど、実弥がそばにいるのでやはり寝るところまで行かない。
しばらく頑張ってみるけれど、やはり寝れない。
「……は、もういいや…起きよ…」
私は苦笑して立ち上がろうとしたが、実弥にぎゅうぎゅう抱きつかれてそれができない。
「離せよ」
「ヤダ」
「昼寝ができないから散歩行くの…」
「俺も行く。」
そう言う実弥がクマに勝ち誇ったように笑っていたのは気のせいだろうか。うん、気のせいだろうな。