第63章 馬鹿の失敗談
家に帰ったからの実弥の過保護さといえば呆れてしまうほどのものだった。
暖房と加湿器、空気清浄機をフル稼働。電気ストーブに膝かけに手袋、あったかスリッパに湯たんぽ、カイロ、もこもこの部屋着のアウター……。
「我が家のどこにこんなぬくぬくグッズがあったのかしら…」
「俺からのクリスマスプレゼントだと思え。お前がもう二度と薄着しねえように色々集めてたんだァ。」
「嘘でしょ」
私がギョッとしている横で実弥は真剣な表情だった。
「ていうか着込みすぎて私こんもりしてるわ。おはぎも気に入らないみたい。」
『てやっ、てや、こんなもの脱げ!俺をちゃんと撫でろ!』
おはぎは特に手袋が気に入らないらしい。素手で撫でられるのが好きみたいで、布越しによしよしされても嬉しくないらしい。
「まるまるしてて可愛いと思う」
「え、真顔?ちょっと写真撮るのやめてよ」
実弥は無言でパシャリとおはぎを抱く私の写真を撮った。
「ねえそろそろ暖房消さない?電気代もったいないよ。」
「暖を取るための電気代は無駄じゃねえんだよ。お前はいつも暖房をつけないで部屋で過ごしてるから体を冷やすんだ。いいな、これからはつけろ。特に今日みたいに雪の降ってる日は絶対だ。いいな。」
「あ、圧が凄まじいのよ…」
「いいか。今日あげたやつ全部使えよ。絶対に。」
断りきれない謎の勢いがあった。
でも実弥がくれたプレゼントだ。
「うん。大事に使う。とっても嬉しいよ、ありがとう。」
素直な気持ちを口にすると、実弥は満足げに笑った。
「で、お前はこんな時間まで外で何をしていたんだ?」
「それは………ングゥッ」
「!?」
実弥があまりにも自然に聞いてくるものだからつい答えてしまいそうになったが、言うわけにはいかないと済んでのところで下唇を思いっきり噛んだ。
危ない危ない。サプライズで、と意気込んでいたのにこんなところで暴露してしまうなんて本当に笑えない。
一方で実弥は私の不自然な行動にギョッとしていた。
「…お、おい?」
「……………あのね」
「ん?」
「ケーキ食べた後に、もう一回同じこと聞いてくれる……?」
「は??は??」
実弥はさっぱりわからないと言うように、首をかしげた。
しかし、再び私が唇を噛んだのを見て諦めたようだ。