第61章 人間
人間ではなかった私が人間として生きること。
それは難しい。
人間にはなれないから、せめて。
人間らしく。
人間らしく。
人間らしく生きていく。
人間には愛がいるとわかった。
私に与えられた愛は、殴ること、蹴ること、怒鳴ること、罵倒すること、誰かを見捨てること。
けれどそれは間違っている。
わかっている。
間違いはわかるけれど、正しいことはわからない。
お父さん。
お母さん。
私を愛してくれてありがとう。
何よりも歪んだ愛をありがとう。
たくさんの苦労をかけた。痛みを与えた。
そして、それら全てを私に返した。
もう痛みが何かわからないほど、愛を学んだ。
人間らしく、生きていくために。
誰かのために、命懸けで、頑張る。
私はどうせ、迷惑しかかけないし。
だからこそ何が何でも守りたい。
愛を捧げたい。
痛みは与えただけ返される。
もう知っているから。
私は恐れていたの。
怖かったの。
殴られるのも、怒鳴られるのも、もううんざり。
人間でいたい。
暖かいご飯を食べて、お風呂に入って、言葉を喋って、礼儀正しく生きたい。
ごめんね。
間違っているのは、おかしいのはわかっているよ。
でも、私が私であるために、一番大事なことなんだ。