第58章 爆発する音
まだソファで寝転がってうだうだ言っていたが、なんとなく受け流しつつ様子を見た。
だいぶ顔色が良くなったし、まともな話をできるようになった。
「イヤダ起きねえ」
「うんうん、薬飲んだし寝てていいよ〜」
「寝たくねえ」
「…じゃあ、起きててもいいから」
「起きないィ…」
うん。まあ、受け答えはできてますし。
オッケーオッケー。バッチグーよ。
「寝ないし起きないの」
「…それはイヤダ」
「全部嫌なの」
「イヤダ」
「はい、もう、とってもわかりました」
これは話しかけないほうがいいかと思ったが、離れようとするとギラリと目を光らせて唸るので、どうにもできずにいた。
「…」
「何?」
私がそばにいると、具合がいいようだった。おかしな会話を繰り返すなか、ようやく私の名前を呼んだ。
ちょっと意識がはっきりしてきたのかと思った。
が。
「好きィ」
にへっと笑って、ちょっと首が傾く。その顔が酒のせいか赤くなっている。
語尾が伸びているのが、彼らしくて。
「………えっ!?」
たまらず素っ頓狂な声が出る。何を言われたのかいまいち理解できず、時間差で顔が赤くなった。
「え」
「かわいい」
「え」
「好き」
はいもちろん録画しております。スマホでばっちり撮れております。
ええええええええええええええええええええ。
ズッキュンと胸の中を何かが駆け巡る。実弥は…まあ、言ってくれるけど!!!こんな風に、なんか、ニコニコ笑って素直に、真正面から言われることってほとんどないから!!!
「バカ実弥」
私はソファに顔を埋めた。
突然そんなことを言うなんてずるい。
いろんなことがあったのに、私のことがまだ好きだとか言うなんて、本当にどうかしていると思うよ。