第57章 ルピナス
痣が燃えている。
私の体を焦がしている。
果たして、いつまで生きていられるだろうか。
「楽しかったですね」
「うん」
閉園時間になったので、私たちは外に出た。ああ、目まぐるしい1日だった。
私の隣ではゲームセンターでとった人形を抱えながら無一郎くんが笑っている。
「明日はどうしますか?」
「……どうしようか。」
明日のことを考えるとどっと疲れが押し寄せてきた。
旅館に戻ると鉄珍様がおはぎを抱きかかえて出迎えてくれた。
「おかえり。ようあそんだか。」
「はい、たくさん。」
「そうかそうか。」
無一郎くんが嬉々として今日の思い出を語る。
それが終わって部屋に戻ると、もう早くに寝てしまった。二人とも疲れていたんだ。
『痣は寿命の前借り』
『25までしか生きられない』
『でも』
『25を過ぎても生きていた人間がいる』
『神に愛されていたか否かではない。強く生まれただけだ。』
『弱く生まれた私はどうだろうか。』
『痣が発現すれば死ぬだろうか。』
『なぜ、彼は死なずに生き延びたのだろう。』
『誰も辿り着くことのなかった場所にいたのではないか。』
『私はどうすれば辿り着けるのだろう。』
『無駄なあがきだ』
『死ぬとわかっているのに』
『いや、わからないじゃないか』
『本当に死ぬかどうか』
『今この瞬間も痣がお前の体を燃やしているのに?』
『それ以上に冷たいものが私の体にはあるんだよ』
『そんなものがどこにある?』
『あるよ。まだ痣と闘っている。』
『まだ、まだ冷め切ったままの、見えない傷が私にはある。』
『傷はお前の体を抉っている』
『違うよ』
『違わない』
『傷はね、私を守るためにあったんだよ。』
『傷があるから、前を向けた。痛みを知ったから、生きようと思えた。』
『消えてしまいたいと思っても、痛みが私の目を覚ましてくれたんだ。』