第57章 ルピナス
___生きて
___死なないで
私がみんなに願ったように、私も誰かに願われていた。
その言葉は不思議で、意味が分からなくて、それでも理解できなくて。
言葉を、みんなくれたのに。
愛だって、私にくれていたのに。
全部聞き流して、分からないと遠ざけていたのは私だ。
痛かった。
ただひたすらに見えない傷が痛かった。
それでも抗って、抗って。
辛いことから嫌なことから悲しいことから耐えた。耐えて耐えて耐えた。笑って耐えた。
けど耐えられなくなって、抑えられなくなって、人を殺した。
消えてしまいたかった。
だって耐えられないから。苦しいから。
けど、生きた。
生きた。
闘った。
生きようと、言ってくれる人がいた。
命と引き換えに私を守ってくれた人がいて。
大切なことを教えてくれる人がいて。
耐えられたよ。
だから耐えられた。生きて、と言ってくれたのだから。
幸せだと思えたよ。
そうだ、幸せだと思えたんだ。
大切なことを、忘れていたよ。
忘れてはいけないことだったのに。
呪いのように、私に染み付いていた。
『私は愚かだ』と、毎日のように自分に言い聞かせていたから。
まだ私は。
私は、生きている。
生まれ変わっても、消えなかった。
私は。
私は、何を恐ろしいことを考えていたのだろうか。