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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第56章 時間はない


その後部屋に戻ると、寝ていたはずの無一郎くんが扉の前で待ち構えていた。


「師範」

「?どうしたの」

「だって目が覚めたらいなかったから」


私の顔を見てほっと安心する無一郎くん。
腕にはしっかりとおはぎを抱きかかえていた。


『この小僧、お前がいないと騒いで面倒だったんだ。』


おはぎはふてぶてしく鳴いて無一郎くんの腕からとびおり、私たちに興味なさげに畳の上を歩いた。


「だから起きてたの?」

「……師範がいないと、不安だから…。」

「……もう昔みたいに、私はずっと無一郎くんのそばにはいられないんだよ。それでこれからどうするの。」


私が知る無一郎くんは背が低くて、その青い目を覗き込むときにはしゃがまないといけなかった。
けれど今は、私とあまり変わらない。ただ見つめるだけで目が合う。

無一郎くんはぎゅっと私に抱きついた。


「………」

「師範…」

「…私を抱きしめられるくらい、大きくなったんだね。」


私は笑みをこぼした。


「……今の師範は、急にいなくなったあの時と同じ顔をしてる…」

「………」

「僕じゃ話し相手にもなりませんか?まだ子供だから?」


首を横に振ってその背中をそっと撫でた。


「私はね。ただ幸せに生きていてくれるだけでいいの。それ以外は何も君に望まないよ。」

「僕もですよ。」


無一郎くんは私の存在を確かめるように抱きしめる力を強めた。


「僕も師範に生きていてほしいです。」


どうやら、この子は、もうとっくに気付いていたらしい。
自分よりも少し小柄な体が震えているのに気付いたが、私がしてあげられることはない。


「そっか。」


私の声は揺れていた。


「……そうだね。」


無一郎くんの目を見つめる。
おはぎと同じ、青い目。


「そう、言ってくれる人が、いたんだった」


私の目から涙が流れた。


__だから、生きたんだ


そう気付いた時、思い出した時、また無一郎くんが私を抱きしめていた。
私はためらうことなく抱きしめ返した。
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