第55章 いい子いい子
「おはぎがしゃべった!!!」
私の叫びに実弥が青い顔で振り返る。
「は!?」
「ほら!」
「にゃん」
私が抱いているおはぎが鳴くと、またあの声が聞こえた。
『ぶらぶら振り回すくらいなら撫でろよな』
「ほらぁ!!!」
「………」
実弥はなぜか頭を抱えた。立ち上がったかと思えば、ふらふらと私のところまできてポンと肩を叩いた。
「悪かった、。俺が悪かった。」
「は?」
「……無茶させ過ぎたんだよなぁ、あぁ…」
そんな実弥にまたおはぎが声をあげる。
『おい、菓子をよこせ。』
ぺしぺしと肉球で実弥の頭を叩く。かわいいネコパンチなんだけど、言ってることがかわいくない。
「お菓子欲しいって言ってるよ。」
「………」
実弥は黙った。
『よこせやアホ』
パシン!と強めのネコパンチを食らったところでハッとしてお菓子を取りに行った。
おはぎ用のクッキーを手に戻ってきて、そっとおはぎに差し出した。
「ふにゃあぁ~」
しかしおはぎは食べなかった。
『いや、これじゃなくてネチャネチャしたやつにしてくれ』
「ネチャネチャ…」
『はやくしろ』
「あぁ、ささみがいいんだって。」
私がおはぎを預けてささみのお菓子を取ってきておはぎに差し出した。
するとおはぎはモグモグと食べ始めた。
『なんか味が違うな』
「えっうそ!前のと一緒じゃない?」
『まずくなった』
「えぇ~。実弥なんか変えた?」
実弥はまた頭を抱えていた。
が、お菓子のパッケージをそっと指差した。
「ダイエット用…?あぁ、体にいいやつなんだって。」
『ふん、こんなもの』
ぺしぺしとおはぎが憎たらしそうにそれをたたく。
実弥はそんな様子を見ながらずっと頭を抱えていた。