第52章 今も、昔も

私は彼に左腕が潰されていて動けないことを話した。


「そうか、わかった。おい、炭治郎！可能な限り瓦礫を退かせ！」

「はい！」

「嘴平と我妻はもっと大人を呼んでこい！！時透は霧雨の頭ぶっ叩いてでも気絶させるな！！」

「わかりました！！」


無一郎くんは私に向かってボロボロに泣きながら声をかけてきた。死なないで、お願い、とそればかり。

体の上がだいぶ軽くなってきたが、やはりまだ動けない。そんな時、一番大きな瓦礫をひょいと持ち上げる人物が現れた。


「……優鈴！？」

「え。幽霊ですか！？ってうわあああああ！！！いつの間に！？」


大きなコンクリートの塊を軽く片手で持ち上げる姿に炭治郎くんが大袈裟に驚く。

包帯が体中に巻かれていたが、目は確かに力強い輝きを放っていた。


「生きてる？相棒」

「優鈴…！！」


優鈴は瓦礫を投げ飛ばした。
なんでここにいるんだろう、とかなんとか、そんなこと以前に今ここで会えたこと、そしてその痛々しい姿にじわっと目に涙が浮かぶ。


「ごめんね、優鈴、巻き込んで。」

「くだらないことは死んでから言え」


優鈴は私の左腕を押しつぶす瓦礫に手を伸ばし、退かそうと引っ張った。あまりにも大きく、それは彼でも簡単に退かすことできないようだった。

私には見えないが、体育館の崩壊は進み続けているようだった。


「これ以上俺らを巻き込みたくないなら左腕引きちぎってでもそっから出てこいッ！！！いいな！！！」

「…うん！」


私はそう言われて右手でしっかりと地面に手をついて踏ん張り、動かない左腕を引っ張った。

愈史郎さん、優鈴、炭治郎くんで瓦礫をどかし、無一郎くんが懸命に私の体を引っ張る。


「んんんんん……！！んんー………！！！！！」


ぶちっ、と神経か血管か、何かがちぎれる感覚があった。

一つ千切れたらあとは簡単に。


ぶちぶちぶちっとまずい感覚が続いた。


「まずい！！崩れる！！！」

「！！もう本当に左腕ちぎれ！！！」

「いっ今！やってるぅうううー！！！ああーーー！！！！！」


私は叫び声を上げた。