第49章 ジハード
と、ボロが浮き彫りになったところで本題に入った。
「それで、話があるようだけど何かな」
理事長がそう言ってくれたので、私は居住まいを正した。
「まず…ええと、そうですね。私が無惨の存在に気づいた時から…。」
いざ話すとなるとすらすらと話すことができた。
無惨が政治家になったと知った時から、陽明くんのこと、そして童磨くんのことから何から何までこと細やかに丁寧に。もちろん、無惨がもう敵意を抱いていないことも伝えた。
「うん、なるほど。」
理事長は一つ一つを丁寧に噛み締めて頷いてくれた。
宇髄先輩は隣でカタカタとパソコンを叩いていた。どうやら私が話したことをまとめているらしい。
あ、この人そのためにいたのか。
…ていうかパソコン作業できたんだ。
「書き留めることはできたかな。天元。」
「はい、バッチリです」
これは適当なわけでもなく、チラリと覗き見れば文字がびっしりと書いてあった。…タイピングはやっ。
「つーか…改めて見てみるとお前、派手にやらかしてんなぁ…。」
「え?」
「え?じゃねえよ!!なんだこの学園に忍び込んだっつー犯罪スレスレの行動は!!と思いきやお前自身が誘拐だのなんだの犯罪に巻き込まれてんじゃねえか!!」
先輩は私の頭を絞めよう…として、手を止めた。
「阿呆か!!馬鹿か!!馬鹿なんだな!?」
「お、怒らないでくださいよ!馬鹿なのは重々承知ですが私だって色々失敗しちゃって、今それどころじゃないんですから!!!」
逆ギレのように叫ぶと、宇髄先輩は深くため息をついた。大きな声を出しているというのに理事長は何も言ってこなかった。
「……ッ!たく、お前…!」
宇髄先輩は頭を抱えた。
「一人で好き勝手やって、それで今更泣きついてきたっていうのか」
「いいえ?」
私は迷いなく答えた。
…うん、そう出るよね。
まあ都合のいいようにはいかないよね。
「私は話したいことがあったので来たんです。もう一通り話しました。」
……これで産屋敷側に全部話した。童磨くんが危険な存在で、誰かがこれからも狙われる可能性があることはとりあえず伝わった。
一番話したかった無惨のことも話せた。もう無惨は脅威ではないこと。これを理事長から皆に伝えれば反感はないだろう。