第45章 傷が消えるまで生き抜いてー過去の記憶ー
壱の型、垂天遠霞
バチン!!!!!と大きな音が響く。安城殿が振り下ろした刀を下から叩きつけて刀を弾いた。
安城殿の刀が宙を舞い、最終的には隠たちの足元に突き刺さった。みんな叫び声をあげて刀から逃げていた。
「なっ!!霧雨ちゃん!!」
「はい、私、霧雨なのです」
安城殿は手を振るわせていた。
「ちょ…!!ちょっ、何よ今の!!めっちゃビリビリきたんだけど!?」
「霞の呼吸、壱の型、垂天遠霞です」
「そう言うことじゃなああああい!!!」
彼はうがー!!っと喚いていた。…何がそんなに気に食わないんだろうか。
「え、てかあんた、え、私に追いついた?私の刀ぶっ飛ばした???はい??」
「いらっしゃいます」
「はあ……?」
「お館様、いらっしゃるのです」
安城殿はポカンとしていたが、すぐに庭の砂利を踏む音が聞こえた。私がそちらを向くと安城殿もそちらを向いた。
「すまない、少し…出向かなければならないところがあってね。今帰ってきたんだ。」
お館様はボロボロになった屋敷と庭を見ても何も動じることはなかった。
「天晴が私を呼んでいると聞いたよ。何かな。」
心ここに在らず、といった様子だった安城殿がその声を聞いてハッとした。そして、大股でズンズンと歩いてお館様の元まで詰め寄った。
「何じゃありません!!この子の待遇、私が報告申し上げたとおりになっていますわ!!これはどういうことか説明してくださいますか!?」
先ほどまでの乱暴な態度とは違って、急に言葉遣いが丁寧になった。今にも殴りかかろうとする態度は全く変わらないが。
「うん。そのことについて出かけていたんだ。すまなかったね、天晴。君が珍しく気にかけた子だったのに。」
「まあ!動いてくださっていたなら最初から言ってくださればよかったのに!!」
「ごめんね。烏を飛ばしたんだけど、君がここにくる方が速かったみたいだ。一緒に甘味でも食べながら話そう。どうかな。」
「大賛成!!」
安城殿の機嫌が一気に良くなった。…一瞬で丸めこんでしまった。
「君もどうかな。」
お館様は私に尋ねた。なんとも答えられず、ぼんやりとしていた。
「おいで」
一言そう言って私の手を引いた。お館様は私をそのまま無事な部屋まで連れていった。