第45章 傷が消えるまで生き抜いてー過去の記憶ー
任務を三つほどこなしたころ、私の体と服は血で真っ赤に染まっていた。
三分の二は鬼の返り血、三分の一は私の血だろう。
…安城殿から、藤の家というところで休息と治療ができると聞いていたのだが、顔を出せば門前ばらいされた。
『人殺しは門をくぐるな』『汚れた子供は家に入れられない』とか言われたけど、私にはその意味がわからない。
適当に布を巻きつけて、安城殿がやってくれたみたいに治療してみた。でもなんか体から変な匂いがする。自分の家で閉じ込められていた時も、同じ匂いがしたっけ。
…そうだ。お風呂に入ってないからだ。お風呂って入らないといけないものなんだ。
でも、今ここにお風呂なんてない。宿の泊まり方とかわからないし、藤の家は頼れないことがわかった。
………川とかで良いのだろうか。
私は黙々と歩き続け、ふとため息をついた。……疲れているようだ。思えば、体の動きも鈍い。……どうしてかなあ。
ご飯食べてないから?でも、お金ない。鬼殺隊はお給料が貰えるって聞いてたけど、貰ったことない。私は貰えないのかな。別にいいけど。
烏はしょっちゅう私に休めと言ってくるけど、任務が入るんだからそんなことできるはずもない。
………ダメだ、考え事も満足にできなくなってる。ああ、とにかく体を洗おう。…そうだなあ、川とかあれば良いけど。
一日3食食べなさい、と安城殿に言われていたのでそれを守るために私は黙々と木の実を食べていた。
…苦い気がする。安城殿のお味噌汁は美味しかったんだと今更理解できた。山に入れば食糧はたくさんあるし、ここにいればご飯は食べれる。
そういえば、綺麗な川があった。あそこで体を洗おう。
服を脱いでバシャバシャと川に入る。服もついでに洗えば、一気に水が変な色に変わって流れていった。
…汚れ、落ちるかなあ。安城殿がくれた服。
適当に木の枝に干し、自分は拾った布にくるまって焚き火であたたまった。………何か、鬼殺隊って聞いていた話と違う気がする…。