第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
思えば、ずっと、誰かに抱きしめて欲しかった。
石を投げつけられるよりも、そばにいて手を握って欲しかった。
本当は、本当は。
ずっと、ずっと。
押し殺して。
笑って、笑って、笑って。
本当はずっと、ずっと、ずっと。
大きな声で泣き叫んでみたかった。
ここはどこなんだろう。
なぜか私は箱に入れられて、ただじっとしていた。箱の中は私が入ったらもう隙間がなく、さらに黒い布でくるまれているので、動けない。そうしているしかなかった。
「おい、出てこい」
私を箱に入れた人が声をかけてきたが、何も答えられなかった。だってキツキツに詰め込まれているから、動けないし。
「柱の前だぞ!!早く出てこい!!!」
そのまま箱を横に倒され、私は箱と一緒に転がった。砂利の上に出たことで巻かれていた布が剥がれ、皮膚が裂けた。
肌が太陽の下にさらされた。私は与えられた布以外は一糸纏わぬ姿であった。私はただ足元に砂利を見下ろしていた。
「何をしている!!」
すると誰かが私に羽織を被せて、体が見えないように抱きしめてくれた。…ああ、知ってるこの人。
鬼に襲われて、屋敷から出た私を救ってくれた人だ。
ほむら色の髪で、用事があるからとあの時はすぐに帰ってしまったけど…。そういえば、その後に箱詰めにされたんだっけ?
「こんな子供に…丁重に扱えと言っただろう!?」
「で、ですが…」
私はただされるがままだった。
「あ、暴れて手がつけられませんでしたので…」
それは箱に詰められて、お父様の時みたいにひどいことをされると思ったから。
「……負傷もしました。この子供は危険です。爪で腕の肉を裂いたのです。」
その人が服を捲ると、そこには血が滲んだ包帯が見えた。……。確かに、やったけど。