第41章 可哀想な人
「実弥が言うなら行かない!他の方法を考えるね。」
ニシシッと笑って言うと、実弥は呆れたようだった。
「俺が言わなくても行かないつもりだったんだろうが。」
「へ?もしかして巌勝のこと?」
「なんで呼び捨てなんだよ」
ブスッとしているようで困り果ててしまった。
「え、と、恋慕の情なんて一ミリもなくて「当たり前だ!!!」…はは」
何か誤解しているのではないかと思ったがそうではなかった。
「実弥は私と対等じゃない?」
「…あ?」
「巌勝の言葉は上からっていうか………実弥の言葉は安心する。」
「………はあ」
実弥はちょっとだけ優しい表情を浮かべた。
「お前、ほんと調子いいよな」
「なんでよ」
「阿呆」
「なんでよ」
…?
まあ、機嫌直ったみたいだしいか。
「それで、考えるってどうするんだよ。」
「ああ、もういくつか考えてるから大丈夫。気にしないで。」
最近ぼんやりとしていることが多かったのは考えごとをしていたから。まだ完璧ではないが…。
「…もう動いているのか?」
「まさか。まだ時期じゃないでしょ。」
「……何を企んでるんだ?」
「さぁ〜」
肩をすくめて誤魔化したが、実弥はガシッと私の頭を鷲掴んだ。…力こもってないし痛くもなんともないけど怖いからやめてくれ。
「ひっ。なんでございましょっ。」
「吐け。」
「え、つわりで散々吐いてるけど。」
「企んでること全部言え。」
「ひえっ」
ドスの効いた声で言われ、すっかり怯えてしまった。いや待て。怖い。巌勝より怖い。他の誰かが見たら借金の取り立てにしか見えない。
「海に沈めるのだけはご勘弁を……」
「あァ?」
「〜〜〜〜〜っ!言います!言いますから勘弁してえええぇぇぇ!!」
頭をブンブンと振り回して実弥の手を振り払う。
すると、実弥は満面の笑みでにっこりと笑った。
……そんな顔されたら許すじゃん!!!