第40章 好き、嫌い
「は、春風さん、あのね、アリスちゃんはね」
たまらなくなって口を挟もうとした。
「私たち、高校と大学がおなじなのよね。」
しかし。アリスちゃんはそう言った。
「……仲が、よろしいのですね。」
春風さんはニコニコ笑っていた。人がいてくれて嬉しいようだ。
「アリスちゃん…」
彼女は私にしかわからないように首を横に振った。……あなたの妻だと名乗り出るつもりはないらしい。
春風さんは優しく微笑んだ。
「そういえば、どこかで会ったことありましたっけ?」
「え?」
「いや、あなたは最初に覚えているかと私に聞きましたし…それに、なぜだか懐かしい感じがするのです。」
その言葉にアリスちゃんが目に涙をためて黙り込んだ。春風さんが怪訝そうに顔を覗き込む。
「……どうかしました?」
「いえ…何でも」
アリスちゃんの背中がやたらと小さく見えた。春風さんは優しく微笑む。
「また会いに来てください。これからもさんをどうぞよろしくお願いします。」
私は二人のやり取りに胸が締め付けられたが、ただ黙ってその様子を見守っていた。
……アリスちゃんがそれでいいなら、私もそれでいいや。
自分にそう言い聞かせて、無理に笑顔を張り付けた。