第40章 好き、嫌い
“彼”は大学の同級生だった。同じゼミに所属していたので、うんざりするほど顔を合わせていた。
けれど仲良くはなかった。
初めて会った時から彼が大嫌いだった。
苦手、でもなく嫌いだった。
ニコニコ笑っているのに感情が真っ白で気持ち悪かった。話している言葉にも感情がなかった。
その全てが不気味で、気持ち悪くて、どうしても彼を避けた。
けれど彼はよく私に話しかけてきた。
『今日も綺麗だね』
と_________________
「今日も綺麗だね」
にこりと笑う。言葉にも表情にも、本質がない。感情がない。
「大学卒業してから会ってなかったよねぇ。あんなにうんざりするほど毎日あってたのにさ!」
「………」
「久しぶりだねえ」
ずっと昔からの親友のように彼は話しかけてくる。そんな彼にも苛立ちを覚える。
「そんな話はどうでもいいんだけど_____________童麿くん」
私が名前を呼んでも彼はにこりと笑っていた。
「ねえ、聞かせてよ。君は鬼だったの?」
「うん!そうだよ。しかも上弦だったんだよ。」
童麿くんは自慢げに言った。
「上弦の弍!すごいでしょ?あの小さくてまん丸な目の男の子と、変な妄言ばっかり言うあの男の子は俺が殺したんだよ。でも俺は女の子が大好きだから食わなかったけどね。ていうか、まん丸な男の子の時は君が邪魔したんじゃないかあ。
あの時会ってたのに、忘れちゃうなんてひどいなあ。大学で再会できたときに俺は胸が躍るほど感動したのに!!運命って本当にあるんだよ!」
私は沸々と怒りが込み上げてきた。
こいつは一体何を言ってるんだ?
何をそんなに意気揚々に語っている?